ブッダ物語２１

シッダールタが宮廷においてバラモンやサモン達から受けた教育とは、神の4段階、 １真我意識の悟り ２宇宙意識の悟り ３神意識の悟り 、そして ４神意識における全創造世界の完成 という、とてつもない人間進化のプロセスでした。「いったい神意識の悟りとは何を理解することなのだろう。それを理解すれば人間や存在のすべての謎が解け、生も死も老いも病の問題も解決し、戦争のない平和な世界を実現することができるのだろうか。」彼の導師の中には優れた人物がいたのでしょう。この魂進化の階梯をシッダールタは理解していたのです。しかしどんな導師も、このプロセスは示せても“神の悟りとはいかなるものか”、それをシッダールタに教えることはできませんでした。

ブッダ物語２２

すでに禅定において止観を得していたシッダールタでしたが、やはりどう考えても“神とは何か”はわかりません。そしてそれは彼の生きた時代から2500年以上たったこの21世紀の現代においても、説き明かすことのできない人間にとっての永遠のテーマなのです。 「この宇宙の真理を説き明かせる聖者はどこかにいないのか。これが説き明かせれば、この世界に間違いなく平和が訪れるというのに。」 29歳を迎えるころ、彼にようやく一子が誕生します。当時の王は息子をつくることがひとつの仕事と考えられていました。そしてこの息子が生まれたことは彼の王宮での使命であり、それを果たしたことがシッダールタに出家を決意させる直接的なきっかけとなったのでした。「神とは何か。なぜこの宇宙が生まれたのであろう。」 永遠のこの人類のテーマを悟るべく、シッダールタは王宮をあとにしたのでした。

ブッダ物語２３

カリユガという言葉が現在もインドに伝わっていますが、このカリユガとは現代の社会の秩序が乱れ、地球自体の存在すら危うくなる時代といいます。そしてこれがブッダの語る末法の時代であり、この時代が恐るべきことに急激に、クリタユガと呼ばれるひとつの神、ひとつの宗教によって治められた平和な世界に変わるというのです。シッダールタが官廷での生活を捨て、のちの７年追い求めた悟りとは、まさに最後のこの時代に我々が説き明かすと、この世界のすべての価値観と秩序を変え、欲徳から人間を解放する“神の悟り”に他なりません。 それは現代科学が数千年の叡智を結集して辿り着いた、まさに“なぜ宇宙が誕生したか”、その答えを理解してしまうことなのです

ブッダ物語２４

彼はまずへんぴなカピトラヴィストゥを出て、当時最も栄えていた大国マガダの首都ラージャグリハへと徒歩で旅を続けます。そこには当時有名な霊的導師であったアラーダ・カーラーマ仙とウドラカ・ラーマプトラ仙という人が、それぞれ数百人の弟子を従え、アシュラムを構えていたからです。辺境のシャカ国とはうって変わって、そこはまさに大都会。多くの人々が行き交い、そして情報に満ち、文化レベルも格段に高い大都会でした。マガダ国の王様はビンビサーラ王といい、当時のインドの最強国にふさわしい聡明な人物であったと、仏典は伝えています。彼には信仰心もあり、また優れた政治力を持ち、この大国は治められていました。 そのビンビサーラ王が王宮の窓から外を眺めていると、なんとも高貴で毅然としたひとりのサモンが歩いているのが目につきました。それはまぎれもなく、出家したばかりのシッダールタでした。

ブッダ物語２５

その姿は高貴で、それでいて気負いはなく、さっそうとし、どう見ても普通の人とは思えません。どこか名のあるサモンではないか。さすがに大国の王を務めるビンビサーラはピンとくると、家来にそのサモンを丁重に宮殿に迎えるように命令しました。シッダールタは慣れぬ土地で、しかも大国マガダのあの有名なビンビサーラ王が、自分の姿を見つけ会見を求めてきたことを告げられると、ひとつの運命を感じ快くマガダ王宮へと案内されるまま向かいました。シッダールタがマガダ王宮へ入ると、ビンビサーラ王がさっそく姿を現し、この出家したサモンに対し、礼をもって素性を尋ねてきました。「私はシャカ族のゴータマ・シッダールタと申すもの。わけあって出家し、今導師を求めこの国の都に着いたばかりです。」シッダールタはこう答えました。「シャカ族のゴータマ・シッダールタ。おお、王家の方ではありませんか。シッダールタ…。」 ビンビサーラ王は、昔耳にしたうわさをふと思い出しました。

ブッダ物語２６

ブッダ物語２７

「シッダールタ太子。あなたをこのまま出家させるのは、この世界にとって大きな損失です。ブッダの道を究めるのもとても大切なことはわかっています。しかしどうか出家の道はやめて、この国で働いてはもらえませんでしょうか。」ビンビサーラ王は言いました。 しかし、シッダールタは無言でそれに答えます。明白なる拒否の証です。ビンビサーラ王は懇請しました。 「かつてアシタ仙人はあなたにはブッダの道のほかに、この世界を統一する大王の道があると予言されたそうではありませんか。この国の半分を献上します。どうかその力で、全インド、いえ全世界を統一し、法律と武力によってこの世に王道楽土を築いてみてはいかがでしょうか。」 なおもシッダールタは、無言でそれに答えます。

ブッダ物語２８

ビンビサーラ王はこれ以上言うのは失礼だと気づき、諦めきれない気持ちを抑えつつ、がっかりとした口調で「そうですか。だめですか。ならば、この世界がなぜ生まれたのか、この世界がどこへ向かっているのか、まさしくこの神の意志をあなたが悟った時、一番に私にその答えを聞かせてもらえないでしょうか。」こう語りました。シッダールタはにっこり笑顔で答えると、しばらくの間王と歓談し、食事を取り、再び旅立って行ったのでした。「何と優れた若者だろう。ブッダとはいかなるものか。もしかしたら彼から、未だ誰にも説き明かされたことのないこの宇宙創造の秘密を、私は聴くことができるかもしれない。いや、きっと私は、アシタ仙人が涙してまで悔んだその教えを聴くことのできる、最高の幸運をこの人生で手に入れることができるであろう。」 こう思いながらシッダールタを見送るのでした。そして無意識にシッダールタに手を合わせる自分に気づき、苦笑するのでした。

ブッダ物語２９

すでに止観を達成し、神の悟りを目指すシッダールタが、アラーダ・カーラーマとウドラカ・ラーマプトラをそれぞれ訪ね、わずかのうちにふたりを感服させ、再び旅立っていったという風聞がビンビサーラ王の耳に入るまで、さほど時間はかかりませんでした。この話を耳にすると、王は自らの人物眼の優れたことを誇りに感じるとともに、アシタ仙人の予言したブッダ出現が現実味をおび、身震いしている自分に気がつきました。「どうやら私は、ちっぽけな人間の一生を超えた世界を、本当に理解することができるかもしれない。」今シッダールタは、小乗という小さな船を捨て、多くの人を導き育むことのできる大きな船を構築するため、再び新たな道へと旅立っていったのでした。

ブッダ物語３０

こののちシッダールタは有名な7年間の苦行に入ります。肉体を極限にまで追い込んで、精神的なひらめきを得ようとしたわけです。しかし7年後、釈迦はこの極端な苦行期を振り返り、意味がないことを悟ります。そしてスジャータのおかゆによって身体を癒され、改めて落ち着いて禅定できる場所を探しました。シッダールタはこの時にはすでに、自分がまもなく神の悟りを得るということにうすうす気がついていました。そして初めにプラグボーディ山と呼ばれる山に登り、その洞窟で悟りを得ようとしました。しかしその山の神が現れ「とても私のようなものが、ブッダが悟りを得るという出来事に耐えることはできません。」と、シッダールタに別の場所で究極の悟りを得ることをすすめます。そしていよいよ、現在のブッダガヤと呼ばれる土地のネーランジャ川のほとりにある大きな菩提樹の下で悟りを開くことになります。