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メールマガジン  「ブッタ物語1〜10」

ブッダ物語1

お釈迦様という人は本名をゴータマ・シッダルータといい、今から約2500年前、今のネパールに属する地域の一角、ヒマラヤのふもとにあるシャカ族という部族が治める小さな領国の王様の子供として生まれました。シャカ族の人口や何語を話していたかは、今も誰もわかっていません。 ただ仏典の一部に、シャカ族はコーサラ国という、当時マガダ国とインドを2分していた大国のひとつに属していたという記事があることから、どうやらコーサラ国の一領主国だと推測されます。使用人にいたるまで白い米を食べていたという記述から、勤勉で働き者、そして交易によって栄えていた国ではないかといわれています。

 

ブッダ物語2

当時のインドには、バラモンというお坊さんを頂点としたカーストという階級制度があり、この世では武人や商人よりも、神の意志をこの世界に伝えるお坊さんが一番偉いのだという考え方が、この国にはありました。今もそうですが、インドのお坊さんは大きなお寺を国土の各所に経営し、祭式を執り行い、さしものコーサラやマガダといった大国の王様や大臣達もいずれかのお寺の檀家になり、しかるべき神に帰依し奉るといった風習を無視できず、バラモンというお坊さんには頭が上がりませんでした。 また、当時からインドには“ヨガや瞑想を通し悟りを開く”というひとつの精神文化が根付いており、こうしたバラモンとは別に、チャクラを開き200人、300人といった弟子を持ち、教団を構え、地域の信仰を集めたり、人々に教えを説く聖者という文化がありました。

 

ブッダ物語3

当時そんな修業を積み、カーストを越え聖者となったひとりに“アシタ仙人”と呼ばれる人がいました。この人は当時シャカ族の領土からさほど遠くない、ヒマラヤの中腹に弟子たちと住み、アシュラムを構える立派な聖人でした。この聖者アシタがある日、瞑想中にひとつの啓示を受けます。それは、ヒマラヤのふもとに住む小国シャカ族の王家にブッダが生まれ、神と人、生きとし生けるものに教えを説くであろうというお告げでした。 アシタ仙人は自らも占星術を使い、ブッダ誕生の兆候はつかんでいましたが、その場所や家に関してはわかっていませんでした。しかしその霊視能力のおかげで、その夜、ブッダの生まれるべき場所と時間を天界の神々から聞かされたのです。彼は喜び勇んで山を降り、ブッダの生まれるという御所へ向かいます。

 

ブッダ物語4

シャカ族の王様は、スットダナーといいました。妃はすでになく、子を産むとほどなくこの世を去っていました。そのためブッダになるであろう赤子は、父親と乳母の手によって育てられ、名をゴータマといいました。アシタ聖者がこのスットダナー王の王宮を突然尋ねると、王は驚き、喜び勇んでこの聖者を御殿に迎え入れます。「今ここに世界の王となる子が産まれたと、天界の者達からお告げを受け、私はここへやってきました。どうかその子にひと目会わせていただけませんでしょうか。」アシタ仙人は言いました。スットダナーは大いに驚き、仙人から事の事情を聞くと、喜び勇んでわが子をこの聖者へと差し出しました

 

ブッダ物語5

占術、顔相、そして真言に通じていた彼は、その子を抱くと「おお、偉大なる御子よ」と言って経文を唱え、神々に代わりこの御子に祝福を捧げました。そしてよくよく顔を見ていると、赤子はその小さな足で聖人の額を無意識に軽く蹴りました。スットダナーがはっとすると、聖人のほほを一筋の涙が流れ落ちます。 スットダナーが再び驚くと、聖者アシタは語りました。「私が涙しているのは、すでに私は年を取り、この方が大人になり語るであろう偉大なるその言葉を聴けないことが、残念でならないからです。この方は大きくなると、人の道を志せば世界をまとめる転輪王に、そして心の道を志せばブッダとなり、永遠にこの世界の礎となるであろう普遍なる教えを説くことになるでしょう。」と、この赤子の未来を予言するのでした。

 

ブッダ物語6

スットダナーは聖人の言葉に驚くとともに、歓喜を隠すことができませんでした。現在、大国に挟まれ、いつ攻め込まれるかわからない小国を率いる王様として、自分の息子が世界を制覇する大王になってくれるという予言ほど、心強いものはありません。しかし気になるのは、心の道を目指し隠遁者となり、坊さんになってしまうという予言です。現実主義者のスットダナーにとって、こちらの予言は決して有難いものとはいえませんでした。彼には息子シッダルータが自分のあとを継ぎ、父子協力し合ってこの国の兵を従え、インドに一大強国をつくりたいという野望があったからです。その大事な跡取り息子が帝王学を無視し、瞑想だの悟りだのといった浮世離れした、訳のわからぬ世界に入っては、大変困ってしまいます。そのため王は、そののちこの息子に極力霊的なものへ触れる機会をなくし、この世の快楽と帝王学に沿った勉強を中心とした生活を与え、この世界を支配する転輪王となるべく育てようとします。

 

ブッダ物語7

しかしそんなスットダナーの願いとは裏腹に、この皇太子には生まれながらにシッダ能力(霊的直感知)が備わっていました。有名なエピソードとして、12歳のシッダルータはシャカ族がその年の豊作を天に感謝する豊穣際において、王族や大臣達とともに貴賓席に座るなか、ひとり自らの心を豊穣祭の行われる会場の近くに舞い降りた小鳥に移し、その一生を追体験したといいます。 こうしたエピソードからみても、シッダルータは生まれながらにチャクラがかなり開いた人であったことがわかります。しかし今と同様、当時においてもそうした分野を明確に語れる人などまずなく、その霊体験をシッダルータ自身もどう受けとめていいかわかりませんでした。そして、このころからシッダルータは世の無常について考え始め、やがて誰からも教えられることなく、真実を求めるべく瞑想を始めました。

 

ブッダ物語8

それから日に日に感受性を高め、世の矛盾や不条理についての質問を、一般教養を教える教師達に見境なく繰り返すシッダルータの姿を見て、スットダナーは嫌な予感を感じます。どうもシッダルータは、俗世間のことより形而上学的社会の矛盾のほうを重要に思っているようです。アシタ仙人のふたつの予言のうち、世界をひとつにまとめる転輪王の道ではなく、お坊さんの道のほうへとこの息子は傾いてしまっている。そう感じたスットダナー王は、さらにこの息子に寒期、暑期、そして雨期用の美しい宮殿を3つも建築します。そしてそこに美しい女官や踊り子を集め、息子が、役にも立たない哲学探究より俗物的快楽に傾くようハーレムとしました。

 

ブッダ物語9

ハーレムでは、毎日毎夜、狂乱の式典が行われ、シッダルータ青年はその真っただ中でもてなされ続けます。しかし彼は、そんな宴には見向きもせず、やはり哲学的な思索を続け、そして家庭教師や大臣達がしどろもどろしてしまうほどの難問を繰り返すのでした。 「なぜ人間は生まれるの?」 「なぜ人間は死ぬの?」 「なぜ人間は老いるの?」 「なぜ人間は病で苦しむの?」 見境なく教師達にくいつくこの息子の姿を見るにあたり、スットダナーはかえって霊的導師をつけないことがこの息子にとって愚であることを悟り、考えた末、実学の教師のほかに高い位のバラモンや評判のサモンをあてがいました。そして質問はすべてそうした霊的導師へと向けられるようにし、シッダルータのこの傾向は何とかおさまります。そうしてようやく落ち着きを取り戻したのを見ると、スットダナーはなんとかこの浮世離れした息子を俗世間に引き戻そうと、嫁をとらせることを思いつきます。

 

ブッダ物語10

当時のインドでは16歳は立派な青年であり、一族の中から特に血統正しいヤショダラというひとりの美しい娘を、息子の妃へと迎え入れます。そのためか、それから何とか見た目にはシッダールタの生活は落ち着き、国の公務もこなし、次期王様としての日常を送るようにはなってきました。そして、実学とともに瞑想や導師達からの指導も欠かさず受け、しばらくの間は日常生活、瞑想、聖典学習をバランスよく織り交ぜた青年期を過ごすことになります。この時期がシャカにとって、“のちに達成する神の悟り”を探求するうえでの基礎学習期間になったことは、言うまでもありません。悟りとは一朝一夕で達成できるものではないのです。長期にわたる優れた聖典の学習なくしては、成り立たないものなのです。しかしその胸には、同時に、いつか必ず出家したいという意志を隠していたのでした。

 

 
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  バックナンバーリスト  
  第1部  
  ブッタ物語1〜10  
  ブッタ物語11〜20  
  ブッタ物語21〜30  
  ブッタ物語31〜40  
  ブッタ物語41〜49  
  第1部 おさらい  
   
   
     

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